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*...and they all lived happily ever after Part 1-3*

それから、一週間後。

今は、フランシスとぐだぐだしている。

 

 

 

 

俺はあれから菊の病気を理解しようと、ネットや医学書で散々調べて何とか病気の事は理解した。

 

でも、俺だって生きてるんだから正直な所は「何で菊が」そう思ってる。

どうすればいいのかも全く分からない。

 

薬の副作用で食欲も落ちて食べ物を口にする事も愚か、匂いを嗅ぐだけで吐き気が襲うらしい。

点滴で栄養を取っているけれど、菊はそのせいでかなり痩せてしまった。

そんな菊に俺は何もしてやれないし、どうする事も出来ない。

 

本当に苦しいのは菊であって、決して俺じゃない。

菊のほうがずっとツラいし、どうすればいいのか分からなくなってるだろう。

 

だけど、ゴメン。

 

俺のほうがもう無理。

 

 

「…何で菊だったんだよ」

 

「アーサー?」

 

フランシスの前で泣き言なんて言いたくなかったけど、仕方ない。

 

一度言い始めたら今更止めたくないし。

 

「何で菊があんなに苦しまなくちゃならないんだよ」

「アーサー」

「菊は何か悪いことしたのかよ?」

 

「アーサーっ」

 

何度も俺の名前を呼んでくる。

たぶん俺の口を塞ぎたかったのだろう。

そんな些細な事にさえも俺はイラついて。

 

「うるせぇ!!お前に分かるわけないだろ!もう、もう俺は菊が苦しむとこなんて見たくな―…っ!!

 

そこまで言っていきなり衝撃が頬に走った。

それと同時に耳に乾いた音が届く。

 

「アーサー!いい加減にしろよ!」

 

ここまでフランシスに本気の平手打ちをくらった事は初めてだった。

 

「…」

 

「まだ菊ちゃんが諦めてないのに、弱音ひとつ吐かないで頑張ってんのに何で先にお前が先に諦めてるんだよ!

 

フランシスに叩かれた所が熱さから、だんだん痛みに変わっていく。

そのせいなのか分からなかったけど、俺の目からは涙がこぼれ落ちた。

 

きっと俺だって精神的にガタが来ていたのだろう。

 

それは、すなわち痛みだけのせいではないと言う事。

 

「っ、アーサー!?」

 

フランシスが驚いた顔で見ている。

頬に触れると、微かな痛みがする、そして涙で濡れていた。

 

そういや、こいつの前で泣いた事なんて無かったな。

 

いつだって泣くときはだいたい一人で泣くだけ泣いて、それで何とかなってきた。

今回の事だって、菊の前だけでは泣きたくなかったから一人で何度も泣いた。

 

病の事を調べて、その事を知っていくたびに想像を絶した現実が突きつけられて、菊の方が辛いのなんて初めから分かっていたけど。どうしたって一気にこんな苦しい現実を噛み砕いて、自分の中で受け止められるわけがない。

 

「俺だって、苦しいんだよ。薬の副作用のせいだって分かってても、菊は無理やりしか笑わないのも知ってる。本当は俺と会うのだってしんどいのも知ってる。」

 

俺の苦しみなんて菊に比べればたいした事無いんだろうけど。

 

「そこまで知ってんのに知らないふりするのがつらいんだよ」
 

そういった俺にフランシスは小さな声で俺に言った。

その声には、確かに優しさも混じっていて。

 

「アーサーがするのは、菊ちゃんが言ってくれるのを待つんじゃなくて、自分から聞く事じゃない?傍に寄り添ってあげる事じゃない?アーサーの事は俺が苦しいときにこうやって聞いてあげるから、な?」

 

こいつにそんなに優しいこと言うなんて思ってなくて、俺は「今日だけ」そう思って声を殺したまま泣いた。

 

こいつだって菊と仲良かったしツラく無いわけないのに、自分のことは何一つ言わずにただただ俺の話を聞いてくれた。

 

 

 

小さく「礼は言わないからな」と言うとフランシスは「いつもの事でしょ」そう笑っていった。

 

 

 

 

・・・

 

 

 

フランシスのおかげで大分気持ちは軽くなった。

 

あれから俺が落ち着いてからフランシスは帰って今は一人、ベットに寝転がりながら菊の病の事を医学書で調べている。

 

 

不意に、枕元で携帯のバイブレーションがなった。

 

急いで電話に出ると王の声がした。

 

 

『カークランド』

 

「?」

 

『お前、もし菊のこと負担に思ってるんだったら菊と別れてほしいある』

 

「は?」

 

意味が分からない。

俺が菊のこと負担に思うわけが無いだろう。

 

『お前は知らないだろうけど、菊お前が帰ったあと最近ずっと泣いてるある』

 

「何だよそれ…」

 

そんなの知らない。

俺が知っているのは、無理やりしか菊が笑わない事と、俺と会うことがしんどい事だけだ。

 

『菊が、”アーサーさんには言わないで。”そう言うから言わなかったあるがもう限界ある。あれ以上今のままで居たら菊は壊れちまうあるよ』

 

「俺は菊のことを負担になんか思ってない!

 

『お前がそういうのは分かってたある、でも菊はそうは思ってないあるよ』

 

携帯を持った手が嫌な緊張で汗ばんでくる。

何となくこの先を予想できて。

 

『菊はお前の負担になるくらいだったら別れたほうがいいといってるある』

 

あぁ、やっぱり。

予想通りだった。

 

菊が言いたいことなんてもう大体分かる。

あの時も、菊は俺の迷惑になると思い込んで俺のところをふった。

 

俺はそうは思ってないのに。

 

でも、

菊は今すごく不安なんだと思う。

 

俺なんかよりもずっとずっと。

 

「…俺は、菊がなんと思ってようと、なんと言ってようと、絶対会いに行くから」

 

フランシスがあそこまでしてくれたんだ。

 

悔しいけど、すごく助けられた。

 

だから言ったとおり、俺はもう待つんじゃなくて自分から菊の傍に寄り添いたい。

そう思う。

 

 

 

 

王はもう何も言わなかった。

 

王にもまた俺がなんと返すかなんて分かっていたのだろう。

 

 

 

 

俺は自分から電話を切った。

 

 

 ☆

 

一人の夜ほど嫌なときはない。

 

抗がん剤の治療を始めてもうすぐ3週間目。

 

吐きすぎて壊したのども大方良くなってきた。

でもその代わりに今度は髪が抜けるようになりだした。

そのことは、薬の副作用だということは最初に聞いていたからそこまで驚かなかった。

 

 

でも、私にとってはそれが酷くショックで。

 

 

女性でなくても、やはり精神的にこたえた。

あの時彼は確かに、私が私でなくなってもそれでも私を好きで居てくれると言ってくれた。

彼を疑うわけではないが、その言葉を今、素直に飲み込む事は出来ない。

 

もう、彼の負担になるくらいだったら彼と会わないほうがいい。

 

一番初めと同じ考えをしている自分が無性におかしくなって少し、笑った。

でも本当にそう思うのだ。

彼も負担だけにはなりたくない。

彼のことが、自分なんかよりも大切で、愛しいと思っているから。

 

彼は隠しているようだけど、最近学校を早退しているらしい。

その理由は私に会うため。

それに、面会時間までは院内の図書館に居るという事を私は知っている。

帰りも本当にギリギリまでいて、それから家ではまた私の病について調べてくれている事もフランシスさんからメールで聞いた。

睡眠時間をかなり削っているから学校で空き時間を見つけるたびに寝ているのも聞いて知っている。

 

全部彼が私を思ってくれているというのは分かっているけれど、それは紛れも無く彼の負担だろう。

彼がどんなに違うといっても肉体的に疲れることは私にだって分かる。

だったらやっぱり彼とは会わないほうがいいだろう。

 

 

 

一人の夜ほど嫌なものは本当にないと思う。

広い世界でたった一人みたいな錯覚に陥ってしまうから。

 

 

 

こんな日ほど貴方に会いたくなる日も、また、無いのだ。

 

 

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